なぜ社内報は読まれないのか。読者起点で考える社内コミュニケーション
2026/05/29
2026/10/02
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なぜ社内報は読まれないのか。読者起点で考える社内コミュニケーション
2026/05/29
2026/10/02
それは、「誰に読んでほしいのか」が決まっていないこと。
私たちは、ここに大きな原因があると考えています。
「全社員向け」が、社内報を難しくする
社内報というメディアには、ほかのメディアにはない特殊性があります。それは、基本的に全社員が読者であることです。新入社員もいれば、管理職もいる。営業職もいれば、エンジニアもいる。本社勤務の社員もいれば、工場や店舗で働く社員もいる。入社したばかりの人と、30年以上働いている人では、会社に対する知識も関心もまったく違います。同じ会社に勤めているという共通点はあっても、社員一人ひとりが置かれている状況や、知りたいことは大きく異なります。
ところが社内報をつくるときには、
「全社員に分かる内容にしよう」
「誰が読んでも違和感のない企画にしよう」
と考えてしまいがちです。
「せっかくつくっている社内報が、本当に社員に読まれているのか分からない」社内報の担当者の方と話していると、こうした悩みをよく耳にします。表面的には「企画がマンネリ化している」「ネタがない」という相談であっても、その奥には「そもそも社員は社内報を読みたいと思っているのだろうか」という不安があるのではないでしょうか。
もちろん、表紙のデザインを変えたり、人気企画をつくったりすることで、一時的に読まれることはあります。しかし、それだけでは根本的な解決にはなりません。なぜなら、社内報が読まれない原因の多くは、企画やデザイン以前のところにあるからです。
それは、「誰に読んでほしいのか」が決まっていないこと。
私たちは、ここに大きな原因があると考えています。
「全社員向け」が、社内報を難しくする
社内報というメディアには、ほかのメディアにはない特殊性があります。それは、基本的に全社員が読者であることです。新入社員もいれば、管理職もいる。営業職もいれば、エンジニアもいる。本社勤務の社員もいれば、工場や店舗で働く社員もいる。入社したばかりの人と、30年以上働いている人では、会社に対する知識も関心もまったく違います。同じ会社に勤めているという共通点はあっても、社員一人ひとりが置かれている状況や、知りたいことは大きく異なります。
ところが社内報をつくるときには、
「全社員に分かる内容にしよう」
「誰が読んでも違和感のない企画にしよう」
と考えてしまいがちです。
その結果、どうなるでしょうか。誰にも嫌われない代わりに、誰にも強く刺さらない情報になってしまいます。これは社内報に限った話ではありません。あらゆるコミュニケーションは、「誰に伝えるのか」が曖昧になるほど、「何を伝えるのか」も曖昧になります。
「平均的な社員」は、本当に存在するのか
社内報の企画会議で、「平均的な社員が理解できるくらいで」という言葉が使われることがあります。しかし、私たちはこの「平均的な社員」という考え方そのものを、一度疑ってみる必要があると思っています。
たとえば40歳の社員を想像してみます。同じ40歳でも、入社18年目の管理職かもしれません。中途入社して半年の社員かもしれません。営業の第一線にいる人もいれば、バックオフィスで働いている人もいます。海外拠点にいる人もいるでしょう。年齢が同じであっても、その人が会社に求めている情報はまったく違います。
ましてや、会社全体の平均年齢や平均勤続年数から「平均的な社員像」をつくったところで、実際にはそんな社員は存在しないこともあります。社員の多様性が増している現在、なおさらです。
だからこそ、全社員に届けるメディアだからこそ、ターゲットを考える。
一見矛盾しているようですが、これが重要です。
ターゲットを決めることは、誰かを切り捨てることではない
「社内報なのに、ターゲットを絞ってしまっていいのでしょうか」
こうした疑問を持つ方もいると思います。ここでいうターゲット設定は、一部の社員だけに情報を届けるという意味ではありません。読者はあくまで全社員です。
そのうえで、今回のコミュニケーションでは、誰に最も強く届けたいのか。
を決めるということです。
たとえば、社内報の目的のひとつが、「次世代リーダーを育成すること」だとします。その場合、全社員を読者としながらも、30代前後の中堅社員や、新任リーダー、リーダー候補を戦略的なターゲットに設定することができます。
すると、掲載すべき情報も変わります。経営戦略についての記事を載せるとしても、単に社長の話を全文掲載するのではなく、「事業戦略で押さえておきたい3つのポイントや「リーダーたちは、どこでキャリアの転機を迎えたのか」といった企画に編集することができます。
ターゲットが明確になることで、初めて「どう伝えるか」を考えられるのです。
WHOが決まると、WHATとHOWが決まる
社内コミュニケーションを考えるとき、私たちは3つの視点を大切にしています。
WHO 誰に届けるのか
WHAT 何を届けるのか
HOW どう届けるのか
実際の社内報制作では、HOWから考えてしまうケースが非常に多くあります。
「社員紹介をやろう」
「座談会をやろう」
「社長インタビューを載せよう」
「漫画にしてみよう」
もちろん、これらはすべて手段としては有効です。しかし、その前にWHOとWHATがなければ、その企画が本当に必要なのかを判断することができません。
「最近、社員紹介をやっていないから」
「前号が対談だったから、今回は座談会にしよう」
これでは、企画を埋めること自体が目的になってしまいます。
本来は、誰に、どんな変化を起こしたいのか。
という目的から逆算する必要があります。WHOが決まれば、WHATが見えてくる。WHATが決まれば、初めてHOWを考えられる。この順番が重要です。
「何を載せるか」より「何を載せないか」
社内報の担当者が抱える大きな悩みのひとつに、「ネタがない」があります。しかし実際には、企業の中に情報がないことはほとんどありません。むしろ逆です。経営方針、事業ニュース、人事情報、商品情報、社員紹介、拠点紹介、イベント、制度、研修、社会貢献活動。伝えたい情報はいくらでもあります。だからこそ難しい。特に紙の社内報には、物理的なページ数の制約があります。Web社内報であっても、社員が読むことのできる時間には限りがあります。つまり、社内コミュニケーションに必要なのは、情報を増やすことではなく、情報を選ぶことです。
何を掲載するかを決めることは、何を掲載しないかを決めることでもあります。人事情報はイントラネットに集約する。速報性の高いニュースは社内SNSで伝える。背景や意味を理解してほしいテーマは、社内報で深く伝える。メディアごとの役割を整理することで、社内報に載せるべき情報も明確になってきます。
そして、その判断基準になるのが、「誰に、何を届けたいのか」なのです。
読者を決めると、編集に「意思」が生まれる
ターゲットが明確になると、編集の判断も変わります。たとえば、会社の決算について社員に伝えるとします。若手社員を中心に届けたいのであれば、難しい会計用語を並べるよりも、グラフや図を使う。ポイントを3つに絞る。「この数字が自分たちの仕事とどう関係しているのか」を説明するといった編集が必要になります。
一方、管理職を中心に届けるのであれば、事業別の数字や、市場環境、次年度の課題まで踏み込むことが求められるかもしれません。同じ「決算情報」でも、誰に届けるかによって、編集はまったく違います。
つまり編集とは、情報をきれいに整理することではありません。読者に合わせて、情報の意味を翻訳すること。それが編集の大切な役割だと私たちは考えています。
「読ませる」より、「読みたくなる理由」をつくる
企業側からすると、「社員には会社のことをもっと知ってほしい」と思います。しかし社員からすれば、会社が伝えたい情報だからといって、必ずしも読みたい情報とは限りません。ここには、発信側と受け手側のギャップがあります。
だからこそ、「どうすれば読ませられるか」ではなく、「この社員にとって、なぜ読む意味があるのか」を考えなければなりません。会社の戦略を理解することが、自分の仕事の判断につながる。別部署の仕事を知ることで、仕事がしやすくなる。経営者の考えを知ることで、会社がどこへ向かっているのか理解できる。仲間の挑戦を知ることで、自分も挑戦してみようと思える。そこまで設計されて初めて、社内報は単なる情報媒体から、組織を動かすコミュニケーションへと変わっていきます。
社内報をつくる前に、問い直してみる
もし、いま自社の社内報について、
「読まれていない」
「企画がマンネリ化している」
「ネタが思いつかない」
と感じているのであれば、新しい企画を考える前に、一度問い直してみてください。
この社内報を、一番読んでほしい社員は誰だろう。
そして、
その人に、何を感じてほしいのか。
何を理解してほしいのか。
読んだあと、どんな行動をしてほしいのか。
そこが決まれば、必要なコンテンツも、編集方法も、デザインも変わります。社内報は「全社員向け」だからこそ、読者を考えなくてはいけない。読者起点でコミュニケーションを設計すること。それが、読まれる社内報をつくる第一歩です。そして私たちは、それこそが社内報だけではなく、あらゆるインナーコミュニケーションの出発点だと考えています。