社内報に必要なのは「Only」か「First」か。 編集方針を決める、たった2つの考え方

インナーブランディング

執筆者:glassy&Co. 代表 工藤太一

2026/10/02

2026/10/02

社内報に必要なのは「Only」か「First」か。 編集方針を決める、たった2つの考え方

インナーブランディング

2026/10/02

2026/10/02

なぜ社内報は読まれないのか。読者起点で考える社内コミュニケーション

「社内報をつくっているけれど、社員に読まれている実感がない」
社内広報に携わっている方から、よく聞く悩みです。
読まれない理由としては、

「忙しくて読む時間がない」
「自分には関係のない内容が多い」
「仕事に役立つ情報が少ない」
「毎回似たような内容になっている」

など、さまざまな理由が考えられます。
もちろん、どれも間違いではありません。
ただ、もう少し根本まで掘り下げていくと、理由はとてもシンプルです。
読者である社員にとって、そこに読む価値がないからです。
では、社員が「読みたい」と思う社内報には、何が必要なのでしょうか。
その答えを考えるうえで、私たちは社内報の編集方針を大きく2つに分けて考えています。
「Only」か「First」か。
今回は、社内報の編集を考えるうえで大切な、この2つの視点についてお話しします。

社内報は「読まれること」が目的ではない

まず、前提として考えておきたいことがあります。
社内報は、読まれるためにつくるものではありません。
もちろん、読まれなければ情報は届きません。
だから、「どうすれば読んでもらえるか」を考えることは重要です。
しかし、閲覧率を上げることや、社員に面白いと思ってもらうこと自体が、社内報の目的になってしまうと、本来の役割を見失ってしまいます。
社内報は、会社が伝えたいことを社員へ届け、会社への理解を深め、組織の中に共通認識をつくっていくためのコミュニケーション手段です。
大切なのは、
「読ませること」ではなく、「何を届け、その結果どうなってほしいのか」
を考えることです。
だからこそ、企画やデザインを考える前に「編集方針」が必要になります。

編集方針があると、判断に迷わなくなる

社内報を制作していると、毎回さまざまな判断が発生します。
このテーマを掲載するべきか。
この人にインタビューするべきか。

経営情報をどこまで載せるのか。
社員紹介をどう切り取るのか。

紙で伝えるのか、Webで伝えるのか。
編集方針が決まっていないと、そのたびにゼロから考えることになります。
逆に、「この社内報は何を大切にして編集するのか」が言語化されていれば、判断の基準が生まれます。
編集方針とは、単なる制作ルールではありません。
社内広報の目的を実現するための戦略です。
そして、その編集方針を考えるさらに手前にあるのが、
OnlyとFirst
という2つの考え方です。

「First」——どこよりも早く伝える

Firstとは、その言葉の通り、
「どこよりも早く情報を届ける」
という考え方です。
会社で何が起きているのか。
経営が何を決めたのか。
新しい制度がどう変わるのか。
新しい事業が始まったのか。
社員が知るべき情報を、できるだけ早く届ける。
つまり、情報の「速報性」に価値を置く編集方針です。

かつて社内報は、社内情報を得るための重要な情報源でした。
しかし現在は、社内ポータル、チャット、メール、社内SNS、動画配信など、企業が社員へ情報を届ける手段は大きく増えています。
経営からのメッセージを、当日のうちに全社員へ届けることもできます。

そのため、「First」を担う媒体は、紙の社内報に限らなくなりました。
むしろ、速報性が必要な情報については、デジタルの方が適しています。
重要なのは、
「どの情報を、どの媒体から、どのタイミングで届けるのか」
を設計することです。
すべてをひとつの社内報で伝えようとする必要はありません。

「Only」——ここでしか読めないものをつくる

もうひとつが「Only」です。
Onlyとは、
「ここでしか得られない情報を届ける」
という考え方です。
私たちは、これからの社内報では、この「Only」がますます重要になると考えています。
会社から発表されたニュースをそのまま掲載する。
経営計画をそのまま転載する。
プレスリリースを社員向けに少し書き換える。
もちろん、それらも必要な情報です。
しかし、それだけでは「社内報だから読みたい」という理由にはなりません。
すでに知っている情報なら、社員にとって価値は高くありません。

そこで必要になるのが「編集」です。
情報を集める。

背景を掘り下げる。
人に話を聞く。
違う視点から問い直す。
点と点をつなぐ。
そうすることで、
「ここでしか読めない情報」
へ変えていきます。
これが編集の仕事です。

 

事業計画を載せるだけでは、事業計画は伝わらない

例えば、新しい中期経営計画が発表されたとします。
数字や戦略そのものは、説明会や社内ポータルなどですでに社員へ伝えられているかもしれません。
それをもう一度社内報に掲載しても、情報としての新しさはありません。
では、社内報では何を伝えるのでしょうか。
例えば、
なぜ、この戦略を選んだのか。

経営者はどんな問題意識を持っているのか。
どんな未来をつくろうとしているのか。
そこに至るまでに、どんな議論があったのか。
現場の仕事と、この戦略はどうつながっているのか。

こうした背景まで掘り下げていく。
あるいは、経営者自身について、
どんな経験から今の考え方が生まれたのか。

どんな仕事観を持っているのか。
何を大切にして意思決定しているのか。
そうした「人」の部分を伝えてみる。
すると、単なる事業計画の説明ではなくなります。
社員が、「だからこの方向を目指しているのか」
と理解するためのコンテンツになります。

 

伝えるべきなのは「What」だけではない

企業の社内コミュニケーションでは、ともすると「What」ばかりが増えていきます。
何をするのか。

何が決まったのか。
目標はいくらなのか。
新しい制度は何なのか。
もちろん、それらは必要です。
しかし、人が動くためには「What」だけでは十分ではありません。
Whyが必要です。
なぜ、それをするのか。

なぜ、それを大切にするのか。
なぜ、この会社はその未来を目指すのか。
その背景を編集し、社員が理解できる形にして届ける。
そこに社内報の大きな役割があります。

社内報は、会社の「らしさ」を編集するメディア

社員にとって、本当に価値のある社内情報とは何でしょうか。
それは、インターネットを検索すれば出てくる情報ではありません。
その会社で働いているからこそ知ることのできる、
働く人の想い。

仕事の裏側。
プロジェクトが動き出した背景。
挑戦の過程。
うまくいかなかった経験。
意思決定の理由。
受け継がれてきた考え方。
これから目指す未来。
そうした、その会社にしかない情報です。
つまり、社内報が編集しているのは、単なる「社内情報」ではありません。
その会社「らしさ」そのものです。
会社が何を大切にしているのか。
どんな人たちが、どんな想いで仕事をしているのか。
これからどこへ向かおうとしているのか。
一つひとつのコンテンツを通じて、それらを社員へ伝えていく。
その積み重ねが、
「自分たちはどんな会社なのか」
という共通認識を組織の中につくっていきます。

 

社内報はインナーブランディングの手段になる

インナーブランディングというと、大掛かりなプロジェクトを想像されることがあります。
MVVを策定したり、ブランドブックを制作したり、全社イベントを開催したり。
もちろん、そうした取り組みも重要です。
でも、インナーブランディングは、一度のイベントや制作物だけで実現するものではありません。
日常の中で、会社の考え方や価値観に何度も触れる。
社員同士の仕事や考え方を知る。
経営と現場の距離を少しずつ縮めていく。
その積み重ねによって、組織の中に共通認識が生まれていきます。

その意味で、社内報は非常に有効なインナーブランディングの手段です。
すでに社内報を発行している会社であれば、新しい施策をゼロから始める必要もありません。
まずは、今ある社内報の「編集」を見直すところから始めることができます。

あなたの社内報は「Only」になっていますか?
最後に、一度自社の社内報を見返してみてください。
そこに掲載されている情報は、
他の媒体でも読めるものでしょうか。
それとも、
「この社内報だからこそ読めるもの」
でしょうか。

速報性が必要ならFirst。
深い理解や共感を生み出したいならOnly。
それぞれの役割を意識しながら、自社にとっての編集方針を考えてみる。
それだけでも、社内報は大きく変わります。

社内報は、会社から社員へ情報を届けるだけの媒体ではありません。
経営の想いを社員へ。

社員の仕事を社員へ。
会社の過去を未来へ。
さまざまなものをつなぎながら、
「私たちは、どんな会社なのか」
を組織の中で共有していくメディアです。
だからこそ、何を載せるのか以上に、
何を、どう編集するのか。
そこに、これからの社内報の価値があると私たちは考えています。

WRITER

glassy&Co. 代表 工藤太一

1975年東京生まれ、江東区の印刷会社 ㈱明祥の二代目。就任後、7度のM&Aと3つのを経て、現在は9つの事業会社を傘下に持つ明祥グループ株式会社の代表も務めている。新規事業として立ち上げたブランディング支援のglassy株式会社では、大手上場企業・ベンチャー企業をはじめとする200社以上にサービスを提供している

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