People & Culture 17 Mar, 2021 企業の課題を、効果的なデザインで解決するパートナーでありたい。
ビジネス環境の変化が激しく、且つ、早い時代に「その変化に対応できる組織をつくる」ことは企業経営の命題になっています。その解決の一助となるのが「インナーブランディング」です。
私たちglassyでは"インナーブランディングの達人になる"というビジョンを掲げ、日々、企業様からいただく経営課題のご相談に対して、さまざまなインナーブランディングの施策をご提案しています。
今回のGマガは「インナーブランディングとデザイン」をテーマに第2クリエイティブ デザイナー小林(写真中央)に話を聞きました。
【profile】
広告代理店にてアートディレクターを務め、数多くのTV番宣、美術館等の広告制作に関わる。現職では大手航空会社、商業施設などのインナーブランディングツールにおけるデザインを担当。毎日広告デザイン賞 、TDC賞など受賞歴多数。
クリエイティブの力で、企業の価値に気づかせる
--- 担当されているお客様の中で、インナーブランディングの事例をご紹介ください。
小林
さまざまなお客様を担当していますが、その中で、家事代行を主事業とする企業様のインナーブランディング支援の事例をご紹介します。
こちらの企業様は、面倒な家事を「早く・安く」肩代わりするという、昔ながらの「家事代行」のイメージを払拭し、お客様の暮らし全体をコーディネートして高付加価値を提供する企業への脱却をめざしていらっしゃいます。
そのために、一歩先の品質を確立することや、従業員の意識の向上などが必要不可欠であるとのお考えから、インナーブランディングのご相談をいただいたのがきっかけでした。
--- 世の中的に、これまで以上に女性の活躍に期待が寄せられていますから、こちらの企業様のビジネス需要は高まりそうですね。
小林
はい、そうなると思います。
でも「家事代行」という事業が、いかに社会にとって重要な価値を提供しているか、その素晴らしさが社内に伝わっていたかというと、そうではなかったようなんです。
--- なるほど。ぜひ、その価値を社内に伝えたいところですね。ご相談を受けて取り組んだことを教えてください。
小林
まず、企業様からクリエイティブの力で価値を変えていく「コンセプトブック」をつくりたいとのご要望をいただきました。
コンセプトブックは、商品やサービスのことだけではなく、これまでの歴史やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)など、企業の存在価値をストーリーとしてしっかり伝えられるし、社員の意識改革においても必要なツールだと思いました。
制作においては、ビジュアルやコピー、印刷物の紙質にいたるまで“質感”と“距離”を感じていただくことを重視しました。このこだわりは、企業様の事業の価値の高さを「体験」として伝えたかったからです。現在は、社内報、そして外向け企業サイトのランディングページのデザインも手がけています。
インナーブランディングからスタートし、アウターブランディングにつなげていくという展開は、私自身これまでに経験がなかったので手探りの部分もありますが、かなり長期的な視野で全体に携われることに、大きなやりがいを感じています。
--- 進めていく上での課題などはありましたか?
小林
はい。本来インナーブランディングは、ゴールからさかのぼってプランニングする形なのですが、まずもって社内にインナーブランディングの概念が浸透していなかった。なので、その意義をまわりに理解していただくことを、同時に行わなければなりませんでした。
こちらの企業様だけではなく、インナーブランディングの価値が認識されていない企業様では、担当者に意欲があっても、なかなか予算が確保できないというケースも多いです。まわりの理解を促すためには、インナーブランディングを行うとどのような効果があるかという部分をしっかり見せていく必要があります。
社内をどう巻き込んでいったらいいか、担当者と一緒になって考え、実現させるための方策を練ることも、この仕事の楽しさですね。
企業内のあらゆる「コミュニケーションの橋」をつくる
--- インナーブランディングツールのデザインで、意識していることを教えてください。
小林
インナーブランディングは、効果が出るまでにある程度時間がかかるので、デザインも、その時間軸のなかでストーリー(物語)や、つながりを意識することが求められます。現時点でその企業がどういう状況にあって、どんな表現や手段が必要かという見極めや 、その時折でのリアリティの表現、そして担当者の業務フローに配慮したデザインワークを行います。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)といった企業が大切にしている理念や価値観を継続的に表現するとともに、その企業のリアルな状況をとらえてアウトプットすることが、インナーブランディングのデザインの最大の特長だと思います。
また、コンセプトブックや社内報など一つひとつのツールは手段であり、目標ではありません。言い換えると、インナーブランディングで達成したいゴールまでの計画線上に、ツールやコンテンツのデザインをどう位置付けるかが重要ということになります。
ちなみに、アウターブランディング、あるいは販促やプロモーションにおいては、人々に広く訴える必要があるため、クリエイティブによるインパクトや瞬発力のあるデザインが求められます。デザイン(表現)を通して課題を解決するという意味においては、インナーもアウターも共通していますけど。
--- ところで、小林さんにとって「よいデザイン」とは、どんなものだと思いますか。
小林
そうですね。よいデザインとは、先ほども少し触れましたが、ストーリー(物語)や、つながりがイメージできることだと思います。そういったデザインは、より強く読者の記憶に刻まれるので。また「体験させること」も重要な要素ですね。インナーブランディングのゴールは、社員の行動変容を促すことにありますので、メッセージを自分ゴトとして受け止め、体験に変換してもらうことが大切です。
企業様の状況やトップの考え、会社の動きと背景を把握してデザインに落とすことができれば、担当者も安心して波に乗っていくことができます。最終的には、それが「よいデザイン」ということになるのではないでしょうか。
--- どんなタイプのデザイナーが、この仕事に向いているのでしょうか。
小林
インナーブランディングのデザインには、“企業内のあらゆる「コミュニケーションの橋」をつくる”という重要な役割があり、デザイナーとその組織にも大人の姿勢が求められます。
その観点から、やっぱり「誠実であること」は重要だと思います。物事にまっすぐ向き合い、奇をてらうことよりも「らしさ」や「あるべき姿」を追求し企業の課題に向き合い、寄り添ったデザインでメッセージを組み立てられる人は、この仕事に向いていると思います。時には経営的視点で解釈する視点も必要だとも思います。
もう一つは「コミュニケーション力」ですね。デザイナーは、ともすると裏方にまわりがちですが、積極的にお客様とコミュニケーションをはかることで、デザインの温度やリアリティも上がります。社内報の制作などは、どちらかと言えばお客様の状況次第ですが、インナーブランディングとしての寄り添った提案を高めていくためには、お客様とのコミュニケーションを充実させることが欠かせません。
--- チーム内でインナーブランディングを意識することは、ありますか。
小林
はい、あります。今、一緒に動いているチームでは、glassy自体が掲げるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を意識して仕事と向き合うように伝えています。お客様に提案するときの説得力にもなりますし、日々の業務と重ねてチームメンバーでインナーブランディングを体現しています。
そういった意味で、2020年12月にglassyが開催した「Inner Branding Days 2020」は、非常に大きな意味を持つオンラインイベントだったと思います。インナーブランディングの理論や実践について、さまざまな外部の方とのトークセッションを行ったことによって、会社としての「構え」ができました。
「glassyは本気でインナーブランディングに取り組んでいくんだ」という姿勢を、オンラインでご視聴いただいた方にはもちろんのことですが、社内にも改めて示す機会となり、一気に視野が広がったと思います。
私自身、もっとみんなと語ることやチャレンジすることで成長したいです。世の中を見ても伸びている人は、自発的に課題を見つけ、解決の道を探っています。自分たちの質を高め、お客様に、未来に向かって熱のこもったいい仕事をしていきたいです。